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Research on Economy and Disability
学術創成 総合社会科学としての
社会・経済における障害の研究

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東京大学大学院経済学研究科 READ

最新のエッセイ

2011年3月2日更新

障害者基本法改正の課題 (長瀬修)

 障害者制度改革が今、大きな節目を迎えている。今国会で内閣から提出される予定の障害者基本法改正案づくりが最終段階を迎えているが、そこに障害者の声が反映されるかどうかの大きな瀬戸際である。

 国連で2006年12月に採択された障害者の権利条約の批准に必要な国内措置を行うために、昨年1月、内閣府に障がい者制度改革推進会議(以下、推進会議)が設置された。この推進会議は構成員のほぼ半分が、精神障害者や知的障害者、身体障害者など、障害の問題を最も切実に感じる障害者自身である点と、手話通訳や筆記など情報面の配慮がなされている点が大きな特徴である。これは、権利条約の交渉の際に国連で繰り返された「わたしたちを抜きにして私たちのことを決めないで」という言葉が日本でも現実のものになりつつあることを示している。

 この推進会議は昨年中に29回の濃密な会合を開き、6月に障害者制度改革の推進のための基本的な方向に関する第一次意見、12月に障害者基本法の改正に関する第二次意見を取りまとめた。

 第1次意見では、①権利の主体としての障害者、②差別のない社会、③社会の障壁の除去、④地域生活、⑤共生社会を基本的考え方として採用した。この第一次意見に基づいて、政府は6月に閣議決定を行い、今年の障害者基本法の抜本改正、来年の障害者自立支援法廃止と障害者総合福祉法制定、2013年の障害者差別禁止法制定という方針を明らかにした。

 この第一次意見と閣議決定に基づいて、障害者基本法の改正の方向性についてまとめたのが、第二次意見である。こうした私たちの意見が、2月14日に示された障害者基本法改正素案では、社会的障壁を明記したほか、障害児支援や、選挙等における配慮、刑事手続き等における配慮、国際協力に関する新たな条文が新設されるなど、反映されている点は心強い。

 しかしながら、依然として反映されていない重要な点が、残念ながら残されている。法案提出に向けた残された時間は少ないが、以下を特に求めたい。①、頻出している「可能な限り」という記述を削除すると共に、権利規定を明確にする。②合理的配慮(例えば、車椅子の人のスロープや、ろう者の手話通訳など、障害に応じた常識的対応)がないことが差別であると定義する。③精神障害のある人の不必要な入院をなくし、地域生活に移行できるようにする。④手話を言語であると認める。⑤障害のある子どもとない子どもが地域で共に学ぶことを原則とし、就学先を決める際には、子どもと保護者の意見を尊重する。⑥複合的差別を経験する、障害のある女性に関する独立した条文を設ける。⑦障害者政策について新設される「障害者政策委員会」の委員の過半数は障害者とする。

 チュニジアをきっかけに中東での民主化の動きが活発化している。しかし、いっそうの民主化は日本を含む、すべての社会の課題でもある。私たちの社会の民主化を進めるためにも、「障害者」と呼ばれ、社会の中心からはともすれば排除されてきた人たちの代表を主役とする推進会議が積み上げてきた議論をもとに、障害者制度改革の第一歩である障害者基本法の抜本的改正を是非、大胆にそして細心に進めたい。その際に、「わたしたちを抜きにして私たちのことを決めないで」を深くかみしめたい。

長瀬修
東京大学大学院経済学研究科特任准教授
内閣府障がい者制度改革推進会議構成員

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